【工務店の悩み】契約後の予想以上の建築資材高「このままじゃ赤字…」お客様に負担をお願いするか、被るのか…

プレカット、住宅設備、建材、サッシ、そして人件費……。
「一体どこまで上がり続けるんだ」と、毎月のように届くメーカーや問屋からの価格改定の通知を見て、思わず深いため息をついてしまう。そんな日々を過ごされている工務店の社長さんも多いのではないでしょうか。

「ウッドショック」から始まった一連の資材高騰。
最初は「一過性のものだろう」なんて楽観視していた時期もありましたが、今やそれが日常になり、むしろ「上がらないものを探す方が難しい」という異常事態が続いています。

今回のエピソードは、地域密着で家づくりを続けている工務店の社長さんが抱えている「誰にも言えない本当に苦しい悩み」についてです。

実行予算書と睨み合いながら頭を抱えている社長さん、少しだけ手を止めて読んでみてください。

建築資材がこんな急に上がるとは・・・

ある工務店のお話です。

1年ほど前から熱心に見学会や勉強会へ足を運んでくれているご家族がいました。 予算は決して潤沢ではないけれど、「どうしてもこの工務店の建てる家が好き。社長にお願いしたい」と、何度も何度も打合せを重ねてきたお客様です。

土地探しから一緒に始め、何度も現地に足を運び、間取りのプランも「これなら予算内に収まるし、希望も叶えられる!」というところまで二人三脚で煮詰めてきました。

そして数ヶ月前、ついに「社長、よろしくお願いします!」と笑顔で建築請負契約を結ぶことができたのです。

「本当に良かった。あのご家族のために、最高の家を建てよう!」
工務店経営をやっていて一番やりがいを感じる、最高に幸せな瞬間でした。

目の前が真っ暗になった「最新の見積書」

しかし、歯車はそこから狂い始めました。

契約が終わり、土地の取得手続きが進み、いよいよ着工に向けてプレカット工場や建材メーカーに正式な発注の見積もりを依頼したときのことです。

返ってきた数字を見て、社長さんは一瞬、自分の目を疑いました。 契約直前の積算時よりも、さらに資材価格が跳ね上がっていたのです。

「おいおい、冗談だろ……」

電卓を叩き直しても、結果は変わりません。 当初予定していた粗利益は完全に消し飛び、それどころか、建てれば建てるほど「真っ赤(赤字)」な数字がそこに弾き出されていました。

他社との競合もありお客様の予算の限界も知っていたから、契約時の見積もりはかなりギリギリの攻防でした。そこにこの、予想を大幅に超える資材高の追い打ちです。

止まれない列車、進むしかない現実

通常なら「一度計画を見直しましょう」と言いたいところですが、事はそう単純ではありません。

すでに土地の決済は終わり、所有権はお客様に移っています。確認申請の手続きも進み、解体や地盤改良の手配も完了している。つまり、案件はもう完全に動き出してしまっているのです。

「今さらストップはできない」

文字通り、走り出した列車から飛び降りることはできません。
「 ①に進むか、それとも②に進むか。」選択肢はその二つしかありませんでした。

ここで、社長さんの心の中で猛烈な葛藤が始まりました。

選択肢①:お客様に事情を話して、資材高の一部を負担(増額)してもらう。
「あれだけ信頼して、うちを選んでくれたお客様だ。やっとの思いで契約までこぎつけたのに、着工直前になって『お金が足りなくなったので追加で払ってください』なんて、怖くて言えるか。もしそれで『話が違う!』と激怒されたら? 信頼関係は一瞬で崩壊する。下手をすれば解約、最悪の場合は裁判沙汰にだってなりかねない……」

選択肢②:当初の見積もり通り、契約金額のまま進める。
「でも、このまま進めれば確実に赤字だ。一棟の赤字くらい、会社の内部留保で耐えられると思うかもしれない。だけど、これだけ他のお客様の案件もカツカツの利益率の中でこの大赤字を飲み込んだら、会社全体の経営はどうなる? うちには協力業者の職人さんたちへの支払いもある。社員の給料やボーナスもある。会社を守るべき経営者が、情に流されて赤字を垂れ流していいのか……?」

「誠実な工務店でありたい」という職人としてのプライドと、「赤字案件を受けていいのか?」という経営者としての責任。 その二つの間で、板挟みになって夜も眠れない。胃がキリキリと痛む日々が続きます。

「誰も悪くない」という、やりきれなさ

この問題の一番辛いところは、「誰も悪くない」ということです。

お客様が無理な値引きを要求したわけではありません。 工務店側がズボラな積算をして、どんぶり勘定で契約したわけでもありません。

悪いのは手の届かないところで動いている世界情勢であり、円安であり、インフレです。
それなのに、そのすべてのしわ寄せと痛みを、最後の最後、現場の最前線にいる小さな工務店の社長が一人で背負い込み、ジャッジを迫られている。

「そうなんだよね。うちも全く同じ状況で、今まさに悩んでいるんだよ」

そう頷いてくださる社長さんも多いのではないでしょうか。 これは決して珍しい話ではなく、いま、日本のあちこちの地元の工務店でリアルに起きている悲劇です。

大手ハウスメーカーなら、約款を盾に増額を要求するか、あるいは膨大な体力(資本)で処理できるかもしれません。しかし、顔の見える関係で、信頼を武器に戦っている地域密着の工務店にとって、この「お客様に負担をお願いするか、自社で被るか」の選択は、会社の命運をかけた決断になります。

正解のない問いの先に

もし、今まさに同じような状況で一人悩んでいる社長さんがいたら、これだけは伝えたいです。

「一人で抱え込まないでください。そして、自分を責めないでください」

お客様に頭を下げて一部負担をお願いするのも、痛みを引き受けて自社でやり切るのも、どちらも「正解」であり「不正解」です。経営者としての信念、お客様とのそれまでの関係性の深さ、そして会社の財務状況によって出すべき答えは会社ごとに違います。

ただ、一つだけ言えるのは、もしお客様に「増額のお願い」をする道を選ぶのであれば、小手先の言い訳ではなく、「誠実な情報開示」しか道はないということです。

今、建築業界がどういう状況になっているのか。 仕入れ値のデータや見積書をそのまま見せるくらいの覚悟で、 「本当に心苦しいのですが、このままだとお引き渡しした後のアフターメンテナンスを続けていくための会社の体力が奪われてしまいます。お施主様の家を末長く守っていくためにも、どうかこの一部だけでもご負担いただけないでしょうか?」 と、会社の存続とお客様のこれからの暮らしを守るための「お願い」として、真摯に向き合うしかありません。

逆に、自社で被る決断をするのであれば、それは「今回だけは販促費、あるいは勉強代として割り切る」と腹をくくり、現場のVE(バリューエンジニアリング)や、他の部分でのコストダウン(性能やデザインを落とさない範囲での建材の見直しなど)に全力を注ぐしかありません。

どちらを選ぶにしても、社長の決断が必要です。

今日も見積書と睨み合いながらお客様の顔を思い浮かべて悩んでいる工務店の社長さん。
その「悩み」こそが、家づくりに対して、そして関わるすべての人に対して、どこまでも誠実に向き合っている証拠です。

最後に…

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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