その「親切」が成約を遠ざけている?――街の不動産屋が陥った「内見案内ループ」の脱出エピソード

悩む不動産会社の社長

「社長、明日も朝から3件、お客様の内見が入りました!」

数年前までのうちの事務所なら、この報告は「ガッツポーズ」ものでした。
社員わずか4人、地元の賃貸管理をコツコツとこなしながら、たまに出る中古物件の売買で利益を出す。そんな典型的な「街の不動産屋」にとって、工場誘致による移住バブルはまさに天からの恵みのように見えたのです。

実際、問い合わせの電話が多く週末の予定は1ヶ月先まで真っ黒。 しかし、そんな「お祭り騒ぎ」から1年が経とうとした頃、私はふと、事務所を包む「どんよりとした空気」に気づきました。

数字は、嘘をつきません。 内見数は以前の3倍に増えているのに、成約数は横ばい。どころか、微減。 そして何よりも深刻だったのは、現場を走り回る社員たちの「顔色の悪さ」でした。

「親切な不動産屋」が無料の観光ガイドになる日々

移住してくるお客様は、この街のことをほとんど知りません。
「近くにスーパーはありますか?」「冬の雪の状況は?」「子供の通学路は安全?」 不安でいっぱいのお客様に対し、うちの社員たちは本当に親切に対応していました。

物件を案内するついでに、街のおいしいパン屋を教え、近道の裏通りを走り、市役所の場所まで案内する。 「いやぁ、〇〇不動産さんは本当に親切ですね!」 お客様は満面の笑みで帰っていかれます。

でも、週明けに届くメールは決まってこうです。 「先日はありがとうございました。とても良い街だと分かりましたが、もう少し他も検討してみます」

……何かが、決定的に噛み合っていない。 私たちはいつの間にか、「不動産会社」ではなく「無料の街案内コンシェルジュ」になってしまっていたのです。

「選択肢」という名の暴力

なぜ、あんなに喜んでくれたお客様が決めてくれないのか。 私はある時、案内から戻ってきたばかりの若手社員に、案内中のお客様の様子を詳しく聞いてみました。

「とにかく、ずっとスマホで写真を撮ったりメモをしたり……。でも、3軒目を回る頃には、皆さん無口になっていくんです。最後には『頭の中が混乱してきちゃったね』って、ため息をつかれていました」

この言葉に、ハッとしました。 お客様は、この街に来る前からポータルサイトで何十件もの物件を見て、膨大な情報を頭に詰め込んでいます。その状態で、不慣れな土地へやってきて、1日に何件も内見する。

これは、楽しいショッピングではありません。過酷な「決断の連続」です。 情報が多すぎて、脳がパンクしている。 私たちはそのパンクしかけているお客様に、さらに「新しい情報」を上乗せして、決断力を奪っていたのかもしれません。

「内見予約が入る」ことは、ゴールへの一歩ではなく、お客様をさらに迷わせる「迷宮への入り口」になっていたのでした。

「現地で教える!」をやめる勇気

そこから、私たちはやり方を変えました。 キーワードは、「内見の前の、頭の整理」です。

お客様が現地に来てから「ここは……」と情報を入れるのではなく、来る前にその家での暮らしが「自分たちに合うか合わないか」を、ほぼ結論づけてもらう。
そのための準備に全力を注ぐことにしたのです。

具体的には、ホームページの物件紹介のあり方を変えました。 間取り図や綺麗な写真を見せるだけでなく、「この物件は、こういう家族には向いているけれどこういう人には向かない」という、言わば「選別のための情報」を事前にしっかり提示するようにしたのです。

例えば、 「日当たりは最高ですが前の道が狭いので、大きい車を運転する方にはストレスかもしれません」 「キッチンは古いですが、その分リビングが広いのでDIY好きの方には最適です」 といった具合に。

「案内する前に、お断りされてもいい」 そんな覚悟で、ありのままの姿をまるで現場にいるかのようなリアリティを持って、事前に伝えていくことに注力しました。

事務所に流れる「前向きな沈黙」

この取り組みを始めてから、目に見えて変わったことがあります。 それは、週末の事務所の「静けさ」です。

冷やかしや「とりあえず見たい」という内見が減り、社員たちが外に出ず事務所でじっくりとお客様と電話やメールで対話する時間が増えました。

「サイトで物件写真を見て、事前に聞いた情報とあまりギャップはありませんでした。」

そう言って、1軒目、2軒目の内見でハンコをつくお客様が明らかに増えました。
社員の移動時間は減り、一人ひとりのお客様に寄り添う質は向上しました。 何より「またダメでした……」と肩を落として戻ってくる社員がいなくなったことが、経営者として一番の喜びです。

大手のような派手なキャンペーンはできません。 でも、小さな会社だからこそ、お客様の「決断の重荷」をITやWebの力を借りて、軽くすることはできる。

街の不動産屋の仕事は、ドアを開ける鍵を渡すことだけではありません。 そのドアを開ける前の「リアルな情報」を正直に伝えること。

そんな新しい時代の「おもてなし」の形を、私たちはこれからも模索し続けたいと思っています。

最後に…

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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